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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 186,659 字 · 372 頁

青空文庫

その初めから、彼の人間に傾倒して、陰に陽に、庇ってくれた石川数正を、伝右衛門は、どれほど、ありがたく、うれしく、自分を知ってくれる真の先輩と拝んで来たことかしれない。

もし徳川家に、数正がいなかったら、自分はとうに、この伝統の強い三河生え抜きの仲間を去って、ふたたび飄乎として、浪々の身過ぎ世過ぎを送っていたかもしれない――と常に思うにつけて、その恩を、その知己を、感謝している彼なのである。

それだけに、こよい、伝右衛門は、腹が立った。善意に燃える憤りにたえない。

すでに、小牧前後から、信雄と秀吉との、和解以後には、殊に、石川数正が、大坂方とくさいという徳川家一般の者の白眼が――それに耐えている数正の胸中が――伝右衛門には人ごとならず察しられていた。

表面は、豪快ぶって、至極、らいらく恬淡とみせながら、内には、女性以上の、こまかい嫉妬や術策や排他根性などを蔵している――武門の男どもの、そうした白眼と猜疑には、身分、生い立ちこそちがうが、伝右衛門もかつて、朝夕、針のむしろに坐すような辛さを味わいつづけたものだ。

(いや、自分などは、まだ微々たるよそ者としてだった。