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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 186,659 字 · 372 頁

青空文庫

――彼は、甘んじて、数正の家臣のいましめに、身をまかせ、自分のやしきから、迎えが来ても、わざと、暇どって、逃亡者のあとを、追って来たのである。

が、すぐ、馬を引っ返し、岡崎城の本丸に入って、非常太鼓を打たせた。

「伯耆どのが逐電した」

「御城代が、逃亡したというぞ」

城中は、混乱した。なお、数正の部下に属す者も、沢山に、あとに残されていたからだ。

「立ち騒ぐまい」

伝右衛門は、城代の役を代行して、門々の出入りをかためさせた。そして、浜松の家康の許へは、早馬を立たせた。

非常太鼓におどろいて、城下の武者たちも、駈けつけた。出城の衆では、深溝の城主、松平家忠が、三里の道のりを、汗馬を飛ばして駈けつけて来たのが、到着第一であった。

一方。――事の、間際に。

約を破って、数正との同行を見合わせた松平近正は、子息に家来二人を添えて、

「事の次第を、浜松表へ、お訴え申せ」

と、その夜すぐ、家康へ急訴のため、旅立たせていた。

そのほか、実相を知り、風評を聞き、あらゆる方面からの急報は、十四日の明け方から、その夜にいたるまで、ひっきりなしに、浜松城の奥へはいって来た。