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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 200,320 字 · 398 頁
冬になっても、年は明けても、形勢は変ってこない。
さらに、一年を籠城し、ことしこそは、毛利輝元自身も、吉川、小早川も、西ノ宮附近に上陸し、大挙、信長を圧して来るかと見えたが――依然、その包囲は、示威恫喝にとどまっていた。
とこうするうち、三木の城もはや危ういと聞えて来た。
「三木の城さえ救い得ない毛利軍だとすると? ……」
と、村重もあわてだしたが、事すでに遅しである。
「しまった! 恃むべからざるものをおれは恃んだ!」
いまは足ずりして、独り自己の迷妄と暗愚を羞じるしかなかった。
顧みれば、左右の腕とも頼んでいた中川瀬兵衛、高山右近もすでに敵の招降に従って、伊丹の運命は見離されていた。
孤立。そこにしか、自己を見出し得なかった。
頻々、あらゆる方法で、毛利に来援を催促しても、
(八月には攻めのぼらん)
と、いい、
(九月には事故あれば、十月に至って援軍せん)
といい、返書のたび、猫の眼のように変るので、さしもの村重も、
(いかん!)
と、観念した。
主に引く
荒木ぞ弓の筈ちがひ
射るに射られぬ
有岡(伊丹)の城
寄手の者から世上にまで、こんな落首さえうたい囃されていた。