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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 200,320 字 · 398 頁

青空文庫

この地方の強敵は、何といっても、波多野秀治の一族だった。

討伐にかからない前は、その大敵の本拠、八上城を中心として、ひとしく織田信長へ反意を示している大小地方武族の旗は、各地の要害に散在する四十余ヵ所の城と、三十余ヵ所の砦にわかれて翻っていたものである。

それをここ数年間に、営々と攻め、孜々として降し、約三分の一にまで伐り平らげて行ったのは、まさに山陽の秀吉の武勲と比べても、決して遜色のない惟任光秀のてがらといっていい。

もちろん信長が光秀に信頼することも、その功労を賞揚することも、決して秀吉以下ではなかった。

「筑前と日向とは、まず、織田軍の双璧であろう。いずれも錚々、いずれも若い。両者の働きを見くらべるは、当代の壮観というもの。彼らもよき世に生れあわせたが、予もよき将を左右に持ったな」

率直に、信長は、或る時、老臣たちへこういったこともあるそうであるが、物に感じると、人いちばい激賞して惜しまない信長としては、それも決して政治的なことばではなかった。

その証拠には、特に、惟任の姓をゆるされ、丹波亀山の城に六十万石を附与され、一門の眷族もみな余栄をうけて、いまの明智日向守光秀は、もうむかしの漂浪零落時代の十兵衛光秀ではなかった。