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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 200,320 字 · 398 頁

青空文庫

それを見ると、信長もまた、眼の縁に充血をあらわした。泣き虫な男と泣き虫な男とが寄ったように、しばしはお互いに面をそむけ、小姓や近臣の怪しむ眼を憚っていた。

やがて、信長はいった。

「極暑の頃からこの極寒にいたるまで、因幡、伯耆の僻地において長々の苦労。病みもしつらん、老いもしつらん、などと案じていたが、思いのほか、却って、若やぎて見ゆる。筑前、ひと頃よりは若うなったのう」

若くなったぞと、自分のみ賞められていては、相すまないと思ったのか、秀吉は、

「いや、わが君にも、年ごとにお若くなるやに仰がれます」

と、これへ来る前に剃ったばかりの髯痕を撫して、初めて、笑った。

膳部、銚子が来る。杯は、和やかな主従のあいだを、幾たびも往復する。こういう打ち溶けた待遇は、一族の者でも、めったに恵まれないものであった。

「於次が、初陣したそうな。いつのまに、具足を着る年になったかとおもうほどじゃ。早いものだの」

「ひと目、御覧に入れたく存じました。――明朝は連れ参ります。長浜の寧子や老母にも、見せたいと思いますが」

「見せたがよかろう。これまで来たついでじゃ。そちも一夜は長浜へ泊れ」