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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 200,320 字 · 398 頁

青空文庫

蘭丸

蘭丸

早暁の出立だった。

庭面も、屋根も、霜が白い。桑実寺の広間小間には、また燈火を立てている。

早飯は秀吉の習慣だ。箸をおくとすぐ身支度もすましてしまう。

それに遅れまいと、障子の外、廻廊の彼方などを、あわただしく家臣たちの跫音が往来している。荷梱など運び出している。

「昨夜、帰って参りましたが、深更の御退城、すぐお寝みになられましたから御返辞をひかえておりました」

福島市松と加藤虎之助は、この出発間際の寸暇を見て、秀吉の前へ復命に出ていた。

ふたりは、秀吉の意を帯して、長浜の城に在る母堂と夫人を見舞い、留守の近状を、つぶさにまた、秀吉の老母と寧子夫人から言伝かって来たのであった。

「おう、ゆうべのうち、帰っていたか。して、どうじゃった。長浜の様子は」

「はい」

と、市松がいう。

「どなた様にも、おかわりもなく、わけて御母堂さまには、たいへん御機嫌でいらっしゃいました」

「そうか、この冬、お風邪も召さずに、起きておられたか」

「中国からの殿のお便りには、いつも身を案じて給もるゆえ、寒いうちは、外へ出て百姓もせぬようにしておる。そして、筑前どののすすめに従い、部屋を温かにし、合間には、鼓の大倉、小舞の幸若などを招いて、奥方さまやその余の御家族たちに囲まれ、至極、陽気に暮しておるから、もういささかも陣中では留守を案じ