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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 200,320 字 · 398 頁
――あれまでは、襤褸を巻いているだけで、苦痛も傷口の大きさなども、さして意に介してもいなかったが、播磨へと志して、数里、歩き出してみると、まったく歩くにも耐え難いほどな激痛に襲われ出した。
伊丹城から脱出した晩、暗夜のなかで、何者とも知れぬ敵に一太刀薙ぎられた左の脚の関節部だった。……そっと、襤褸をめくってみると、血膿をふくんだ傷口は大きく口をあいていた。柘榴の胚子のように白い骨が見えるほど深さもふかい。
「このまま、陣中へ行かれても、どうにも、お手当の仕方はありますまい。むしろ、日は遅れようとも、有馬の湯につかって、しばし、御養生の上行かれては」
同行の渡辺天蔵が、しきりにすすめたのである。――考えてみると、身動きもままならぬ体を運んで途中、哨戒のきびしい兵庫街道あたりで、再び荒木勢に捕まるなどは愚な沙汰である。こういう愚は決して勇気ともいえまい。
「そうしよう」
官兵衛は、伴れのすすめをすぐ容れて、道をかえた。――それにしても、この有馬の温泉町へはいるには、細心な警戒を要した。何分にも、いたる処、荒木方の哨兵がいたり、木戸があったりするからだ。
着いた翌る日である。