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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 200,320 字 · 398 頁

青空文庫

と、杯を乞いながら、非常に明るい口吻でなおいった。

「長い人生にも、きょうのようなめでたい日に会うことは、そう幾度もありますまい。あれ、御覧ぜられい。墻の外はいうに及ばず、諏訪一帯は申すもおろか、年来われらの骨折って来た効あって、いまや甲信すべてお味方の旌旗に埋まっているではありませんか。多年の宿願が、眼のまえに、実現したのではおざらぬか……」

彼の声は、常のとおりで、さして大声でもなかったのに、ひどくそのことばは、一座によく通った。

なぜならば、ここかしこで、私語騒然としていた者が、いつとはなく口をつぐんで、

信長の顔と、光秀の方とを、見くらべていたからである。

信長の眼は、まっ直に、光秀のきんか頭を見すえていたのであった。

余りに、ものの観えすぎる眼というものは、時によると、見出さなくてもいい不幸をも見つけ出す。なくてすむ禍いをもあるものにしてしまう。

光秀のきのうからの姿に、信長の眼は、そうしたものまで観とっていた。

常に似あわず光秀は、努めてことば多く明るく粧っている。

そんなはずはない。

と信長は観るのだった。

なぜならば、こんどの論功行賞には、意識的に、彼の名を除外してある。