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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 200,320 字 · 398 頁

青空文庫

――ああ、孔明に先立たれてとり残された劉備。考えてみても、落莫たるものではないか。わしの落胆、わしのさびしさ、喩えるものもありはしない」

あわただしい物音が、そのときこの陣小屋の外に聞えた。松寿丸の知らせを聞き、戦場から輿に乗って、えいえいと急がせて来た官兵衛である。

「なに、もうだめかッ。……間にあわなかったか」

さも、残念そうに、大声で辺りに応えながら、官兵衛は跛行をひいて、ここへ入って来た。

そして、眼を赤くしたまま、枕許に坐っている秀吉の姿と、――今は一躯の冷たいなきがらとなっている友、半兵衛重治のすがたとを見て、

「……う、うむ」

と、重く呻いたまま、身も心も、挫けたように、腰をついてしまった。

それなりである。官兵衛も秀吉もただ凝然と一つものに眼を向け合ったまま、ものもいわず坐っていた。いつか室内は暮れて洞のように暗くなっていたが、燭を燈す者もなかった。死者の白い衾だけが谷底の雪みたいに見えていた。

「……官兵衛」

全身から嘆息をもらすように、秀吉の方からやがて一語いった。

「惜しいのう。かねて、むずかしいとは、思っていたものの……」

官兵衛も、それに対して、多くをいえなかった。