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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 200,320 字 · 398 頁

青空文庫

「これから先は、生涯独りで草深い里に住もうと、心に誓っておりますせいか、もうどこにいても、寂しいなどという心地はおこりませぬ」

彼女の答えを聞きながら秀吉はうなずき、うなずき、

「たのむ。半兵衛の後生をよう弔うてやってくれい。いずこに住もうと、生あるうちには、また会う折があろうが」

と云い、そして、その人の墓のある松の下を振り向いて、

「おゆう、あれに用意させておいた。もうこれ限り、そなたの妙な琴の音を聞く日もあるまい。……ずっと遠い以前、そなたは兄半兵衛に伴われて、当時、織田どのに抗して一族たてこもっていた美濃の長亭軒の城に臨み、琴を弾じて籠城の鬼となっていた将士の心をやわらげ、ついに城をひらいて降したこともあった。――半兵衛の霊にも手向けとなろう。秀吉も名残に聞きたい。……もしまた、その琴の音が、風のまに、ここから近い敵の三木城にまで聞えて、彼らのあら胆に、有情を思わせ、意味なき死を覚らせれば、これは大きなてがらだ。地下の半兵衛もどんなによろこぶことかしれぬ」

と、彼女をそこへ促した。それまでは、彼女も気がつかなかったが、見ると、松の下に、莚をのべ、その上に、一面の琴がおいてある。