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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 200,320 字 · 398 頁

青空文庫

黙々と、ひとり山を下って行くらしい様子なので、従者が、あわてて、

「どちらへ?」

と、訊ねたが、官兵衛は、

「――麓まで」

と、簡単に答え、なお、

「輿は要らんぞ、輿はいらんぞ」

手を振りながら――跛行ではあるが――上手に杖にすがりながら、ぴょんぴょんと、軽く跳ぶように山道を降り始めていた。

あらかじめ、供に従いてゆく者は、命じられてあったとみえて、母里太兵衛、栗山善助のふたりが、それと見て、彼のあとから駈け下りて行った。

「殿、殿」

「お待ち下さいまし」

官兵衛は、杖をとめて、

「おう、両名か」

と、山の中腹で振り返った。

「お早いのには驚き入ります。御不自由なお脚下で、お怪我をあそばすといけません」

「ははは。跛行もだいぶ引き馴れて参った。気をつこうて歩くと却って転ぶ。ちか頃は、勘で跳ぶのじゃ、こつで歩くのじゃよ。見栄はいらんからのう」

「合戦の中ではいかがですか」

「戦場は輿にかぎる。乱軍となれば、双手に剣もつかえるし、敵の槍を奪って、突き返すことも自在。ただし、進退の駈引は、まことにままにならぬが」

「さこそと、お察しいたしております」

「けれどやはり輿にかぎるな。