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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 192,758 字 · 383 頁

青空文庫

そこへの取次であった。

「はてな、施薬院が?」

光秀は眉をひそめた。施薬院は本能寺変の少し前に、信長から中国の陣へ差向けられていた者である。

「ま、通せ。――ともかく」

気のゆるせぬ心地もするが、また多大な感興と好奇も抱いた。秀吉の近状を知る者として、絶好な便りとも考えて面会したのである。

「まずは、御健勝で」

と、施薬院は事もなげに平常どおりな挨拶をのべた。信長のことにはすこしも触れて来ないのが、光秀には何となく痛痒い気がした。

「お許は、中国へ下ったばかりと聞いていたが、どうして、にわかに立ち帰って来たか」

「筑前どのが、直ちに、京都へ攻め上られるため、われらの如きは、足手纏いと思し召されたのでしょう。急に、お暇を下されたので、早々立ち帰って来たわけでございまする」

「なるほど……ムムム」

と頷いてから、ほんの言葉のつぎ足しに過ぎないような語調で、

「筑前は達者か」

と、訊いた。施薬院も、至極、無造作に、

「はいはい、いよいよ頑健な御様子に見られました」

と、答え、

「あのお方の御精力というものは底がわかりません」

と、問われぬことまでいった。

「筑前には早や、毛利と和睦して、北上の途中にあると聞くが、お許がこれへ来る頃には、どの辺まで来ておったか」