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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 192,758 字 · 383 頁
坂本までは」
左馬介光春は胸のなかで、不断にそこの目標を意識していた。行き着くまでは、死なぬぞと誓った。
坂本の城には、なお多くの家中の者と、そして亀山城から移した光秀の夫人や子達や、そのほかたくさんな老若男女の眷族が籠めてある。もちろん自分の妻子もいる。
「あれらの者にも、心安く逝けるように、よい死に方を取らねばならぬ」
光秀のなきあとは、当然、彼が一族の家長であった。光春はいちばん後から死のうと思っていた。
その坂本は程近い。もう一里半か二里である。
しかし大津の町へ入ると、町屋は煙につつまれている。光春の先に立って駈けていた荒木山城の子荒木源之丞、乙之丞の兄弟は、忽ち駒を返して、
「殿々。この道は通れませぬ。――道を変えねば」
と、手を振った。
兄弟に倣って、ほかの徒士勢も、どっと後戻りして来た。両側の家々から火を噴いているので、所詮、熱くて通れないのである。
「なぜ通れぬ」
光春は、先へ出た。
荒木兄弟が、
「新手の敵が、町屋に火を放けて、この先の辻に充満しておりまする」
と告げると、光春は、
「この小勢で、田や畑道を奔らば、それこそ、敵に迂回されて、よい獲物と包まれよう。