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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 192,758 字 · 383 頁

青空文庫

と疑惑する常識を一掃しきれなかった。――もし自分よりも先に光秀の軍へ向って弔い合戦の先陣をつける者があっても、それは神戸信孝か丹羽長秀か乃至、堺に滞在中と聞いていた徳川家康などを加えた近畿合体の織田遺臣軍であろうと見越している程度だった。そしてそのいずれに形勢がうごいても、勝敗は到底一朝一夕のものでなく、織田家において、自分以上の上席にある者のない自分がそこに臨めば、当然、明智討伐の総大将として、われを仰ぎ迎えずにもいられまいと充分思いこんで来たものであった。

そういう予見のあいだに、秀吉という者の存在が皆無ではなかった。秀吉が見たとおりつまらない男だなどとは決して思っていない勝家でもあった。むしろかなり秀吉の底を知っている者といってよい。秀吉の一将校時代からずいぶん意地悪くその擡頭を邪魔したこともあるからである。踏んでも踏んでも拉げない御小人の藤吉郎頃から、近年にいたっては、重臣の自分らと肩をならべ出して来た彼の器量にたいし、白眼、常にゆるがせには視ていなかったのだ。――しかし、それにしても、どうして彼が、毛利軍を措いて、中国から一転できたか、そんな早業ができたか、勝家の常識では、ほとんど、奇蹟を聞くような気がしたのである。