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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 192,758 字 · 383 頁

青空文庫

「……はて。当惑な」

その時、秀吉は、左の手をわき腹にあてていた。そして急に眉をしかめて見せながら、勝家に向っていう。

「これはどうもならぬ。……柴田殿。にわかに、虫気が起ったものとみえ、腹が痛む。失礼なれど、しばし中座する。おゆるしを」

つと立って、評議の席を抜けてしまった。

遠い、台子の間まで来ると、

「いたい。……いたい」

秀吉は大げさに腹痛を訴えながら、まごまごしている同朋衆へむかい、

「枕、枕」

と、よび、それから、

「薬をくれい」

と、すぐ横になってしまった。

大病人のようである。

しかし心得ている病人とみえ、書院庭から吹きこんでくる涼風へむかって枕をすえ、うしろ向きになり、汗に蒸れた襟元を自分でくつろいでいた。

が、典医や茶坊主どもは、あわてぬいている。侍たちも、こもごも見舞に来て、

「御気分は……?」

と、気遣ったが、秀吉は、

「そっとしておけ。そっとしておけ。……持病だ。やがて癒る」

うしろ向きのまま、蠅でも追うように手を振った。

同朋がとりあえず、薫香散を煎じて来て献じると、秀吉は起きて、

「これは、暑気中りにもよい」

呟きながら、喉も大いに渇いていたところか、熱いのを、ふうふう云いながら飲みほした。