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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 192,758 字 · 383 頁

青空文庫

――お使いに参りました。北ノ庄殿の御前まで」

途上、はたと出会った大物見の武者たちへ、駒の上から会釈して、半七郎はもう駈け抜けてゆく。

大物見は、あっ気にとられた。物見頭ひとりが、何か狼狽した声をかけながら、半七郎の駒の後を転ぶように追いかけた。

柴田勝家と幕僚の一群は、

「何者か」

と、猜疑の眸をあつめて自己の陣列にこの若者を迎えた。

眼前に、一戦は必至と、われとわが殺気に昂ぶり立っていたところだけに、駒を降りて楚々、慇懃な礼をしつつ、静かに進んで来た伊木半七郎の優美な身なりが、あたりの鉄槍や火縄のにおいに比して、妖しいもののようにまで眼をひいた。

「丹波殿の近侍というはまことに解せぬが。――ともあれ、連れて来い、会ってみよう」

勝家は路傍の雑草をふみこえて樹蔭の下へ寄った。そこへ床几を置かせ、物々しい麾下の――いや彼自身の硬ばった緊張をも一先ず潜めて――

「何事のお使いかの」

と、さあらぬ容子を使者に示し、その使者へも、まずと、床几を与えた。

「この暑中、遥かまでの御帰国、おつかれでございましょう」

半七郎の言は、まるで平時の挨拶であった。そして、紅の紐で、胸に懸けていた文筥をとり外し、