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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 192,758 字 · 383 頁

青空文庫

或る年の正月のごとき、親臣の輩が揃って勝家の前に年頭の祝いをのべに出た際、勝家から最初の盃がさされたので、勝豊は、当然、自分に向けられたものと思い、

「お盃、めでたく戴きまする」

と、謹んで膝を進めかけると、勝家は膠なく手を逸らして、

「そちではない。――玄蕃、受けい」

と、彼へ先に与えて故意に、勝豊を後にさし措いたりなどしたこともある。

このことは、勝豊の不平として、外部へまで洩れていたから、他国の隠密なども耳にしたろうし、従って、秀吉なども這般の消息には通じていたにちがいない。

その柴田勝豊へ、長浜を譲り渡すためには、秀吉は事前に、従来ここに住ませておいた家族たちを――老母や寧子などを主とする家庭の老幼を――他へ移さなければならなかった。

「冬も暖かいし、内海の魚もある。しばらくは、姫路がよかろう」

と、秀吉のさしずに、老母や彼の妻は一家をあげて、播磨の持城へと引き移った。が、秀吉は行かなかった。この間、寸暇もなかったのだ。

山州宝寺の城を彼はしきりに改築していた。山崎合戦の際には、光秀が牙城としていたところである。ここへ母や妻を入れなかったのも、彼には深慮のあることだった。