輕讀日語

輕鬆讀懂日語經典作品

ja-reading.com

輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。

しんせい

新生

島崎 藤村

線上閱讀島崎 藤村《新生(しんせい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 334,815 字 · 663 頁

青空文庫

それを聞いていた主婦は留学生と岸本の顔を見比べて、

「お解りでございましたか」

という風に、両手を岸本の方へひろげて見せた。

独りで部屋に残って見ると、まだ岸本には船にでも揺られているような長道中の気持が失せなかった。旅慣れない彼に取っては、外国人ばかりの中に混って航海を続けて来たというだけでも一仕事であった。熱帯の光と熱とは彼の想像以上であった。その色彩も夢のようであった。時には彼は自分独りぎめに「海の砂漠」という名をつけて形容して見たほど、遠い陸は言うに及ばず、船一艘、鳥一羽、何一つ彼の眼には映じない広い際涯の無い海の上で、その照光と、その寂寞と、その不滅とを味って来たこともあった。印度洋にさしかかる頃から船客はいずれも甲板の上に出て眠ったが、彼も欄近く籐椅子を持出して暗い波を流れる青ざめた燐の光を眺めながら幾晩か眠り難い夜を過したこともあった。船は紅海の入口にあたる仏領ジュプティの港へも寄って石炭を積んで来た。スエズで望んで来た小亜細亜と亜弗利加の荒原、ポオト・セエドを離れてから初めて眺めた地中海の波、伊太利の南端――こう数えて見ると、遠く旅して来た地方の印象が実に数限りもなく彼の胸に浮んで来た。