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いちかわくめはち

新編 近代美人伝 (下)

長谷川 時雨

線上閱讀長谷川 時雨《新編 近代美人伝 (下)(いちかわくめはち)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 138,172 字 · 277 頁

青空文庫

米や炭を送って、幸子の生活をたすけもした。それなのに、何時も来ると、自分が退いてやっているのだぞといわないばかりの仕打ちに、清子は腹を立てた。

だが、そんな不愉快な日ばかりもなかったのは、若葉の道を蛇の目傘をさしかけて、連れ立って入湯にゆくような、気楽さも楽しんでいる。

――主人の体量、万年湯ではかったら、十四貫三百五十目あったといって、よろこんでいらっしゃったと、日記につけたりしている。

暑い晩に、泡鳴は半裸体で原稿を書き、彼女は傍でルビを振っている。と、青蛙が飛び込んで来た。泡鳴は団扇で追いまわし、清子も手伝った。灯によって来た馬追虫もいる、こおろぎもいる、おけらもいるという騒ぎに、仔犬もはしゃいで玄関から上ってくれば、飼猫も出て来た。虫のとりあいをして、猫がこおろぎを食べると、犬がくやしがってワンワン吠えたてた。

「まるで動物園だ。」

と泡鳴が笑っているという図もあったりした。家庭生活にそこまで、犬も猫もきらいな泡鳴をひっぱりこみ、浸らせた清子の、一筋でない信念の強さがそれでも知れるが、そればかりではなかった。泡鳴は、そうした和やかな団欒には、勧進帳をうたったりなんかして、来あわした妹に、こんなことは兄さんはじめてだと、びっくりさせたりした。