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もみノきはのこった

樅ノ木は残った

山本 周五郎

線上閱讀山本 周五郎《樅ノ木は残った(もみノきはのこった)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 167,285 字 · 330 頁

青空文庫

――いよいよ分割は慥かでございますな。

「これは首の根だ」

――はあ。

「この証文は厩橋侯の首の根だ、東市正の婚儀が済めば侯とは親族となり、この証文が侯の首の根を押える、祝うねうちがあるとは思わないか」

――もはや御万代、これ以上の御祝着はございません。

「飲め、隼人、祝って飲め」

――給仕を召しましょうか。

「待て、下屋敷からなにか知らせは来なかったか」

――まいりました。

「それを聞こう」

――船岡どのに闇討ちをしかけた者がございました。

「甲斐に闇討ちだと」

――望岳亭で御酒宴のあと、さがってまいりますところを襲いましたそうで。

「やったか」

――討ち損じました、あわやというとき、成瀬久馬の機転で、曲者は組み伏せられた、ということでございます。

「成瀬久馬とは、かの者ではないか」

――これまではさようでしたが、さきごろからようすが変ってまいり、どうやら、もはやお役には立たぬもようでございます。

「では変心したというのだな」

――そう認めるほかはないような事実が、一、二ならずございます。

「すると、そのままではおけぬだろう」

――なおようすをみたうえ、然るべく処置を致します。