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もみノきはのこった

樅ノ木は残った

山本 周五郎

線上閱讀山本 周五郎《樅ノ木は残った(もみノきはのこった)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 167,285 字 · 330 頁

青空文庫

――いかにも。

「おれが仙台にいるときから、十左はおれを跟けまわしていた、城中でも、道の途中でも、おれをつかまえようとして、絶えず跟けまわしていた」

――しかし、この一ノ関までまいるでしょうか。

「あいつは逆上しておる、仙台のときにそう思った、船岡からもそう告げて来ている、あいつは一徹者だから、逆上すると狂人のようになる、おれを射たのは十左だ」

――手配は致しました。

「あの痴れ者を逃がすな」

――道は塞ぎました。おれば必ず捕えてまいりましょう。

「足が痛む、薬湯はまだか」

――ただいま。

「横になる、手を貸せ、――このほうが楽だ、斎宮、もういちど手配をぬかるなと申してやれ、十左め、ひっ捕えたらこんどこそ糾明してくれる、あの僣上な忠義ぶった面の皮を、こんどこそ引剥いてくれるぞ、誰かおるか、斎宮、斎宮」

――御家老、殿が召されます。

――薬湯をさしあげておけ、やがてまいるあいだ、暫くお側におれ、……権右衛門、たしかにそうか。

――間違いございません。

――曲者ではないのだな。

――栂の林の中には、供の者が十名ほどおりました、その中の誰かの射た矢が外れたものと思われます。