輕讀日語

輕鬆讀懂日語經典作品

ja-reading.com

輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。

もみノきはのこった

樅ノ木は残った

山本 周五郎

線上閱讀山本 周五郎《樅ノ木は残った(もみノきはのこった)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 167,285 字 · 330 頁

青空文庫

甲斐は暫く考えていて、それから、屋敷を出るがいいな、と云った。

「気づかれてからではおそい、いまのうちに出るほうがいいぞ」

「私はこのままおります」と達弥が云った、「幸い支配に認められて、勘定部屋の常勤めになりましたし、いまでは士分の扱いを受けております、近く扶持も増されるもようですから、これからまだ充分お役に立つことができると思います」

「うん、そうかもしれない」と甲斐はあいまいに呟いた、「この役目を頼んだのはおれだった、おれがおまえにこのいやな役目を頼んだのだ、もちろん、こういうことをしてもらおうと思ったのではないが」

「私は自分の役目を知っております」

「わかってる、おれはこんどの事で、おまえに万一のことがありはしないか、もしもそうだとすれば、無用の危険は避けるほうがよい、と考えただけだ」

「その点では私よりむしろ滝尾のほうが危険です、滝尾のしてくれたことに対しても、ここで私だけが、身の安全を計るというわけにはまいりません、私は屋敷へ戻ります」

達弥が去り、甲斐は元の座敷へ戻った。そこにはかよはいず、おくみが縁先の簾を巻いていた。

午後の陽が傾いて、中庭はすっかり蔭になり、女中の一人が植込へ水を打っていた。