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わたらせがわ
渡良瀬川
大鹿 卓
線上閱讀大鹿 卓《渡良瀬川(わたらせがわ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 280,528 字 · 557 頁
という拘引状であった。永島は拘引の理由には顧みて思いあたる節もないでなかったが、相手の風体を不審そうに眺めて、
「君は警官ですか、そんな風をして」
男はちょっと自分の胸の辺へ目を落したが、再び油断のない目くばりで「永島さんは逃げないでしょうね」と念を押しつつ、腹掛からもそもそと麻繩をとり出した。
「いや、決して逃げ隠れはしません。この場ですぐ繩にかかりましょう」
「逃げないという貴方を縛る必要もないが、これも掟だからやむを得ない」
男はそんな申訳を呟きながら、この場に不似合な微笑をもらした。そして繩目が余り目立たぬようにと心遣いしてか、繩先を兵児帯の下へ絡みつけた。だが、或は途中で仲間の被害民たちの目に触れて、奪い還されはしないかと、それを怖れてのことかもしれなかった。与八が雲龍寺の山門を横目に見て歩み出すと、それまで傍に茫然と突ッ立っていた青木がわれに返った面持で、
「僕は早速事務所へ知らせて、それから君の家へも知らせに行く」
と、うしろから浴びせて門内へ走りこんだ。与八は半纒着の警官とともに富田駅へ来て、そこの駅前の飯屋で昼食をあてがわれた。「官費で飯を食うのは、これがはじめてだ」