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わたらせがわ
渡良瀬川
大鹿 卓
線上閱讀大鹿 卓《渡良瀬川(わたらせがわ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 280,528 字 · 557 頁
第三章
ああ、なんという惨状。――瞼をとじると、慚愧にちかいものが胸を搾めつけてきた。過去十年の自分の努力が、なにか無駄ごとであったような気持さえする。自由のために、民権のために、立てよ、立てよ、と連呼して毛野の村落から村落を走り廻っているあいだに、いく度か渡良瀬を越え来り越え去っているあいだに、徐々に、そうして着々と、今日のこの災禍が準備されていたのである。――正造の思ったことは本当であった。彼が民権運動にささげた十年の年月は、その蔭で、彼と新にまみえるべき闘いを、ひそかに用意していたのであった。
第三章
十二月二十四日の午後、正造の登院はやや定刻に遅れた。議案を片手につかんで議場正面の扉を押した一瞬、場内の妙に粛然たる気配が面をうった。
見ると真むこうの壇上に、逓信大臣後藤象二郎が巨躯を悠然とかまえていて、口角へかぶさった霜毛の髯の下から一言また一言と、いかにも荘重げな声を放っていた。――まさに私設鉄道買収費について原案維持の演説中である。正造には、満場の議員が唯々諾々と後藤の脚下に拝跪しているように思われた。もちろんそれはその場の情景から受けた一瞬の錯覚にすぎなかったが、正造は丸い肩にあらわな敵愾心をみせつつ、後藤とむき合った距離を颯々とちぢめていった。