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わたらせがわ

渡良瀬川

大鹿 卓

線上閱讀大鹿 卓《渡良瀬川(わたらせがわ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 280,528 字 · 557 頁

青空文庫

第七章

椅子を離れるにも、よたよたして覚束ない動作である。木下が階段の上で見送っていると、正造は左手で鉄の手摺につかまりながら、二重廻しの裾で階段の泥を一段々々掃き下していった。

この初対面によって、後年正造の臨終の看取をする機縁が約束されようとは、木下自身もまったく予測しなかった。

第七章

その年の三月二十六日のことである。客足の絶えまを信濃屋の奥の一室に籠っていると、その日はなぜか、小中の留守宅を守っている老妻の佗しい姿が、しきりと瞼に浮んだ。さきごろ微恙だったという便りを手にしたせいかもしれない。正造は、隣家の屋根へきて啼く鴉のこえをききながら、硯の蓋をとった。

「一、其方殿事、明治二十四年父庄造死去の節、正造の何の用意も無之候処、其方殿多年間予て御丹誠を以て、老父臨時の用意身分相応に御心掛置き被下候より、葬儀の準備差支もなく相済候段、正造に代り、子たる者の役相立、偏に御蔭と忝次第に候。爾来正造何の功能なく、留守中家事は元より祖先の供養等までも、多年間御一任被下候段、今更に御礼申上候。何分此上とも御願申上置候草々」

そこで筆をおいたが、まだ一言も老妻のことに触れなかったのに気づいて、