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こぞうのゆめ
潤一郎ラビリンスV――少年の王国
谷崎 潤一郎
線上閱讀谷崎 潤一郎《潤一郎ラビリンスV――少年の王国(こぞうのゆめ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 71,989 字 · 144 頁
隣りの席へ無駄話をしかけては、よく貝島に叱られるおしゃべりの西村までが、今日は利口そうな目をパチクリやらせて、一心に先生の顔を仰ぎ視て居た。暫くの間は、諄々と説きだす貝島の話声ばかりが、窓の向うの桑畑の方にまでも朗かに聞えて、五十人の少年が行儀よく並んで居る室内には、カタリとの物音も響かなかった。
「―――そこで二宮先生は何と云われたか、どうすれば一旦傾きかけた服部の家運を挽回することが出来ると云われたか、先生が服部の一族に向って申し渡された訓戒と云うのは、つまり節倹の二字でありました。―――」
貝島も不断よりは力の籠った弁舌で、流暢に語り続けて居ると、その時までひっそりとして居た教場の隅の方で、誰かゞひそ/\と無駄話をして居るのが、微かに貝島の耳に触った。貝島はちょいと厭な顔をした。折角みんなが気を揃えて静粛を保って居るのに、―――全く、今日は珍しい程生徒の気分が緊張して居る様子だのに、誰が餘計なおしゃべりをして居るのだろう。そう思って、貝島はわざと大きな咳拂いをして、声のする方をチラリと睨みつけながら、再び講話を進めて行った。が、ほんの一二分間沈黙したかと思うと、又しても話声はこそ/\と聞えて来る。