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こぞうのゆめ
潤一郎ラビリンスV――少年の王国
谷崎 潤一郎
線上閱讀谷崎 潤一郎《潤一郎ラビリンスV――少年の王国(こぞうのゆめ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 71,989 字 · 144 頁
やっぱり自分は小学校の教師として何処か老練なところがある。そう思うと彼は愉快であった。
明くる日の朝、学校へ出て行った貝島は、自分の沼倉操縦策が豫期以上に成功しつゝある確證を握って、更に胸中の得意さを倍加させられた。なぜかと云うのに、その日から彼が受持ちの教室の風規は、気味の悪いほど改まって、先生の注意を待つ迄もなく、授業中に一人として騒々しい声を出す者がない。生徒はまるで死んだように静かになって、咳一つせずに息を呑んで居る。あまり不思議なので、それとなく沼倉の様子を窺うと、彼は折々、懐から小さな閻魔帳を出して、ずっと室内を見廻しながら、ちょいとでも姿勢を崩して居る生徒があれば、忽ち見附け出して罰点を加えて居る。「成る程」と思って、貝島は我知らずにほゝ笑まずには居られなかった。だん/\日数を経るに従って、規律はいよ/\厳重に守られて居るらしく、満場の生徒の顔には、たゞもう失策のない事を戦々兢々と祈って居る風が、あり/\と読まれたのであった。
「いや、皆さんはどうして此の頃こんなにお行儀がよくなったのでしょう。あんまり皆さんが大人しいので、先生はすっかり感心してしまいました。