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こぞうのゆめ
潤一郎ラビリンスV――少年の王国
谷崎 潤一郎
線上閱讀谷崎 潤一郎《潤一郎ラビリンスV――少年の王国(こぞうのゆめ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 71,989 字 · 144 頁
役人のうちでも一番位の高いのは、副統領の西村であって、此れは二人の従卒を使って居た。優等生の中村と鈴木とは、始めのうちは性質が惰弱な為めに軽蔑されて居たけれど、次第に沼倉から尊敬されて、後には大統領の顧問官になった。
それから沼倉は勲章を制定した。玩具屋から買って来た鉛の勲章へ、顧問官に命じてそれ/″\尤もらしい称呼を附けさせて、功労のある部下に与えた。勲章係りと云う役が又一つ殖えた。すると或る日、副統領の西村が、誰かを大蔵大臣にさせて、お札を発行しようじゃないかと云う建議を出した。此の発案は、一も二もなく大統領の嘉納する所となったのである。
洋酒屋の息子の内藤と云う少年が、早速大蔵大臣に任ぜられた。当分の間の彼の任務は、学校が引けると自分の家の二階に閉じ籠って、二人の秘書官と一緒に、五十圓以上十萬圓までの紙幣を印刷する事であった。出来上った紙幣は大統領の手許に送られて、「沼倉」の判を捺されてから、始めて効力を生ずるのである。総べての生徒は、役の高下に準じて大統領から俸給の配布を受けた。沼倉の月俸が五百萬圓、副統領が二百萬圓、大臣が百萬圓、―――従卒が一萬圓であった。