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ひのとびら

火の扉

岸田 国士

線上閱讀岸田 国士《火の扉(ひのとびら)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 129,467 字 · 257 頁

青空文庫

「そいじや、さつきのお弁当があるわ。たべる、あんた?」

そこで、道ばたに腰をおろす。

月が出たらしい。

「市ノ瀬さん、北原先生からお便りあつて、その後?」

「いゝや、べつに……」

と、このとつぜんの問いに、彼は、握り飯を口にもつて行く手をやめて、彼女の方をみる。

「あたしのところへは、つい二三日前、二度目の便りがあつたわ。そのお話しようと思つて忘れてたの」

「へえ、今度はどこからですか?」

それほど興味のわかぬらしいこの聞きかたに、彼女はすこし拍子ぬけがしたけれども……。

「やつぱり宇品よ。消息がわかつたらしいの。戦犯つていうの? いよ/\裁判にかゝるらしいんですつて……。結果を待つ気持、どんなでしよう……」

「先生は、しかし、強気だからなあ。そうわかつたら、案外、しつかりするんじやないかなあ」

「しつかりはしてゝよ。でも、あたし、すこし心配なところがあるの。長い手紙よ。まあ、苦しみを訴えるつていうような手紙だけど。ほんとは、どうしようもないつていうことね。なにか、支えるものが必要だわ。一所懸命になれることね、つまり……。女ですもの……」

それには、なんとも答えず、市ノ瀬牧人は、たゞ、