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ひのとびら

火の扉

岸田 国士

線上閱讀岸田 国士《火の扉(ひのとびら)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 129,467 字 · 257 頁

青空文庫

たくらみ

一

「それじやね、トムちやん、あんたも駅までお見送りしなさい。ね、ヒデ子ちやん、そんならいゝでしよう。もう時間がないわ」

モトムがたちあがると、ヒデ子もしぶ/\それをまねた。

駅までの通を、子供たち二人は黙つて手をつないで先へ歩いた。大人たちは、その後から、ぽつり、ぽつり、言葉を交しながら、ついて行つた。

「ほんとに、もう一度伺つてもいゝですか?」

「えゝ、どうぞ、かまいませんわ」

「かまわない、という程度ですか?」

「それよりお返事のしようがないわ」

「来てほしいとはおつしやらないんですね」

「それを言わせないのは、あなたよ」

「ごめんなさい。なにもかもやり直しだ」

電車に乗り込んだ二人は、満員の人混みの中に吸いこまれて、姿はみえなかつた。

しかし、康子は、電車がカーヴを切るまでそこに立つていた。

たくらみ

一

戦争が終つて一年目の東京である。

あたり一面の焼跡のなかに、わずかに焼け残つた家がいくつか立ちならんでいる。そこは郊外としてはわりに早く開けた土地で、庭をひろくとつた洋館まがいの建物も二三軒まじり、そのうち、ちよつと風変りなコッテージで、銅ぶきの屋根はどつしりしているけれども、しつくい壁は雨漏りでところ/″\しみがでたり、ひゞがはいつたりしているうえに、窓ガラスのわれたのへ新聞をはりつけてあるというふうな、いかにも