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ひのとびら
火の扉
岸田 国士
線上閱讀岸田 国士《火の扉(ひのとびら)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 129,467 字 · 257 頁
住み荒すだけ住み荒した二階建の邸があつた。
赤レンガの門柱に、おそらくあとではめかえたらしい木の標札が「二木康夫」と出ている。そして、その下に、これは、臨時の同居人とおぼしい二枚の名刺がはりつけてあつた。
道順を書いた紙ぎれを手に、この門の前にさしかゝつた市ノ瀬牧人は、しばらく標札を見つめていたが、そのまゝ、ヒノキの並木で仕切られた道を、奥まつた玄関まで、あたりを見まわすようにして、はいつて行つた。
呼リンはなんど押しても鳴らぬとみえて、いつこう人の出てくる気配はない。大きな声で、「ごめん」と言つてみる。だめである。彼は裏口へまわつた。勝手の井戸端――と言つても、そこは物置きのヒサシの下で、コンクリートの洗たく場になつているのだが、その洗たく場で洗いものをしている一人の若い女に、彼は、帽子をぬいで、
「ちよつとおたずねします。お宅に井出康子さんはおいでですか?」
「イデヤスコさん、あ、こちらの奥さんですか、いらつしやいますよ」
「わし、市ノ瀬というもんですが……」
「ちよつと、お待ちになつて……」
やがて、玄関の方へというので、またそつちへまわると、玄関のドアがあいて、