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かせいのまじゅつし
火星の魔術師
蘭 郁二郎
線上閱讀蘭 郁二郎《火星の魔術師(かせいのまじゅつし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 151,120 字 · 302 頁
といって、子供の時は、まったく偶にしか見ることはなかったのですけど、それが、中学のなかば頃からは、殆んど毎夜のように夢の世界を彷徨つき廻っていたのです。――その頃からです、夜が眠むられなくなったのは――。うつらうつらとしたかと思うと、夢を見てはっと眼をさまし、真暗な闇の中に、物の気を幻覚したり、夜風の梢を渡る音に怯えたりしては、又深々と床の中に潜込み、そして夢の続きに吸込まれて行ったのでした。
――あくる朝、ふと浅い眠りからさめて、あかあかと障子に朝日がさしているのを見ると、なにかしらほっとした気持になって、なま暖かい床に、長々と寝たまま、昨夜の夢をあれ、これと一つ一つ思い出してみるのでした。そしてその僅かな時間が、私の一日の中で最も愉しい時間なのでした。
その時分から昼間でも、いつの間にかぼんやりと雲のような幻想に浸っている私に気がついて、強い自己嫌悪を感ずるのですが、その後から後からと湧いて来る幻想をどうすることも出来ませんでした。
その頃、私自身が経験したことで、今でもありありと憶えている恐しいことは、ある日活動写真を見に行った時のことでした。