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かせいのまじゅつし
火星の魔術師
蘭 郁二郎
線上閱讀蘭 郁二郎《火星の魔術師(かせいのまじゅつし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 151,120 字 · 302 頁
老人は、まるで青年のような口調でそういうと、自分で自分の説に、こっくりと一つ頷いた。
「なるほど、面白いですナ」
知らず知らず釣りこまれて聞いていた私は、思わず相槌を打ち、それと同時に、自分が話にばかり気をとられていて、このバーに来てから、まだ何も注文していなかったのに気づいた。そしてあたりを見廻して見た。しかしこのバーは、二人をのこして森閑として静まりかえっているのであった。そういえば、先刻から話しこんでいるのに、一向注文を聞きに来ようとする気配もなかったようである。
私が、困惑した眼で見廻しているのに気づいた老人は
「あ、そうそう、なんか取りますか、注文だったらそのボタンを押すんですよ」
と、テーブルの端についている小さい押釦を指さした。いわれて見ると、どのテーブルにもそんな押釦がつけられている。
「妙な仕掛になってますなア……」
私は、半ば唖ッ気にとられながら、その釦を押した。何処かで、かすかに合図の鈴が鳴ったようだ――。どうも実に風変りなバー・オパールである。
が――。その次の瞬間に、私は、なお一層驚いてしまったのである。
それは、今押した呼鈴の響きに応じて、奥のドアーを排して現われた少女の、その余りの美しさから来る驚きであった。