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かせいのまじゅつし

火星の魔術師

蘭 郁二郎

線上閱讀蘭 郁二郎《火星の魔術師(かせいのまじゅつし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 151,120 字 · 302 頁

青空文庫

「……まるで夢物語ですね」

「ばかをいってはいかん。……尤もお前たちから見れば『夢物語』のようなことかも知れないがね。がこの船のようなスピードを出したものは他にあるまい。人類の達した最高の速度の中に、今お前はいるんだ。これほどハッキリした話はあるまい」

「…………」

「一秒間に三百四十米という音と同じ速さは、ほぼこの地球の自転の速さに匹敵する速さだ。だからもしこの船が地球の自転と反対の方向に駛ったら、永劫に夜というものを知らないでいることが出来る……、恐らく空気中では最高の速度だといっていいだろう」

「すごいもんですね……それにしても一向に震動がないじゃありませんか、波なんか問題にしないんですか」

「波? はっははは」

叔父は始めて笑って

「冗談じゃない本当に海の上をすべっていたらとてもこんなスピードは出ないよ、この船は実際は海の上五米ばかりの所を飛んでいるんだ、船の形をしているのは結局人の眼をさけるためさ……」

そういっているうちに、急にスピードの落ちて来た感じがすると、ゆたりゆたりと波のうねりも伝わって来た。

「着水したんですね」

「うん、島についたんだ」

「どんな島です……」