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かせいのまじゅつし

火星の魔術師

蘭 郁二郎

線上閱讀蘭 郁二郎《火星の魔術師(かせいのまじゅつし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 151,120 字 · 302 頁

青空文庫

七ノ四

源二郎爺までが、座蒲団を干しながら、ぽかんと空を見詰めていた。

(俺の知ったこっちゃないぞ)

黒吉は、胸の中で呶鳴ってみたが、やっぱり不安だった。

(俺は、前に、同じ夢を見るだけだ……)

「それがいけないのだ!」

何処かで、そんな声が聞えたような気がして、ゾッとした。

「皆んな集ったか――」

親方は、何を思ったのか、一座の者を集めると口を切った。

「集ったか――。皆んなも知ってる通り、近頃は、まるでなってない。俺にゃもうやっていけなくなった、次の町で打って、打って駄目だったら、もう解散だ……」

そのあとは、聞えなかった。

「解散!」

この一語で充分だ。薄々予期したとはいえ、みんなは、改めて愕然とした。

七ノ四

「解散!」

黒吉は、突然、打ち前倒されたような気がした。

(葉子と別れるのだ――)

そう思うと、解散そのものは別に恐ろしくもなかったが、葉子と別れなければならぬ、ということが耐らなかった。握りしめた拳が、思わずぶるぶるッと顫えた。

(畜生! どうしても……)

彼は石に噛りついても、「良い夢」を見なければならない、と決心した。

狂騒なジンタがまき起っても、黒吉はまだタッタ一人、その楽屋裏に佇立っていた。