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しほんたいへいき
私本太平記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 126,598 字 · 254 頁
――また郎党どもは、手分けして、郷々の名主へ、同慶のよしを、触れ歩け。いずれ年貢下げの沙汰も出すゆえ、百姓を励まして、元気を出せと」
これは、異例だ。こんなさいに、領下の名主や神職たちが、土豪の門へ、祝い言をのべに来る例はあっても、かかる前例は、かつて聞いたことがない。
「よいか、申しつけたぞ」
郎党たちのいぶかりをよそに、正成はそのさしずを、恩智左近にさずけて、特に、念を押した。
「心得まいた」
左近は、のみ込んでいるものらしい。門を開いて、正成の駒を、送り出した。
駒には、正成の近侍二名がついて駈けて行った。しかし水分川の坂道まで来ると、何か、彼の意をうけた近侍だけが、神社の方へ曲がって行き、正成一人は、龍泉の方へ下って、弟正季の屋敷の門を叩いていた。
すでに、その頃は。
ここの屋根にも、檜林にも、風を孕んだ大粒な雨が、あらい音を立て始めて来た。
時ならぬ兄の訪れと聞いて、正季は脂燭を手に、自身迎えに出て来たが、その小さい灯も、雨音に消されそうだった。
「や。兄上ですか」
「弟っ……。降って来た」
「やって来ましたなあ、よいあんばいに。これで御念願もとどいたと申すもの」