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しほんたいへいき
私本太平記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 126,598 字 · 254 頁
「まあ、お上がり下さいませな」
「だって、れこは」
と、拇指を示して、小声に。
「仕事だろう、奥で」
「はい、相変らず……」
「くそ真面目だなあ夫婦とも。卯木さん」
「え」
「このごろ少し、面窶れなすって、何だか、一ばい世話女房ぶりが美く見えるぜ」
「まあ、あんな……」
「まったくさ。三月か四月ッてとこじゃないのかね。きれいな人妻の、妊娠ッてやつは、妙に、男に物を思わせるものだて」
卯木は紅くなって、漬物桶もそのまま、勝手の内へ、身を隠しかけた。
すると、店の裏口から、婆やが来て、禿鳶へ、来客のむねを告げた。――客の名は、
年上が、志津三郎兼氏。
若い方が、後藤助光。
「……その、おふたり様で」
と、婆やがいう。それを、卯木も奥の元成も、よそ耳にふと聞いた。
――禿鳶は、ちょっと、昂奮気味だった。
「えっ、ほんとかい。志津三郎も後藤助光も、当今、一派を称えている刀鍛冶だ。それが打ち揃ってとは……何御用だろ?」
それから、彼は、もいちど卯木の台所口を覗いて、頼んで去った。
「どうやら上客様らしい。すまないが、後でいいから、茶を差し上げてくれないか。あの婆さんじゃ、茶一つ出せない」