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しほんたいへいき

私本太平記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 126,598 字 · 254 頁

青空文庫

六波羅兵と散所民の抗争は、きのうも今日も、いたる所で、血の雨、石の雨をみせていた。

もう焦点の問題などは、問題の外なのである。

日ごろの憎しみ合いだけが、相互の狂気をつのらせていた。古市だけではなく、玉手、柏原、恵我、高安あたりの散所民もまた、呼応して、

「川止めの関を解け」

「稼業ができぬ」

「おれどもを、干ぼしにする気か」

「辻結びを解け」

「放免どもを追ッ払え」

と、彼らの結束力は、兵の行動を、随所で立ち往生のほかなきにいたらせた。

この日増しな様相には、検断所派遣の本庄鬼六も、手のくだしようがなくなった。――兵を駆ッて、弾圧すれば、数を加えて来るのみだし、なだめていれば、藤井寺の営さえ、彼らの奇襲と遠巻きに委せられて、糧道も絶たれかねない勢いだった。

「始末が悪い相手」

彼は、つぶやく。

だが、自身の姿が、すでに散所民の狂暴を刺戟する権力の代行者に見えているものとは決して気づかない。――反対に、石川ノ散所太夫義辰なる者こそ、暴民の背後で糸を引いている怪物だと、睨んでいたが、

「さて? 古市の出屋敷や、石川城へ当るには」

と、それの敢行には、さすが、二の足がふまれてしまう。