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しほんたいへいき

私本太平記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 126,598 字 · 254 頁

青空文庫

だが、恩智左近は、露骨にいやな顔をした。彼は雨乞いの霊験を信じて疑わない者だったのだ。のみならず、この準備をし、山田の勤仕者まで大勢招いておいて、今さらそんなことはできぬ、と強く言い張るのだった。

「始まったな、爺の頑固が」

正季は、舌打ちして。

「したが、もし兄上からも、延期と仰せ出られたら、それでも、爺は、なおやる気か」

「かっ。馬鹿なお訊ねを」

いまいましげに、左近は、伸ばした腰の骨を、叩きながら、横を向いた。

「そうなれや、是非もござりませぬわい」

「よしっ、では兄上から、そのほうへ言っていただく」

正季もすこし、むかっ腹気味である。石段下から駒の背になるやいな、白い埃をのこして、まもなく、兄正成の屋形の前に、とび降りていた。

北を森にかこまれた楠木家の、奥での声。――

「はて。兄上はまだお戻りではございませなんだか」

「はい」

「神社の方では、今し方、お帰りだったと申すので、急いでこちらへ来たのですが」

「ではそのまま、川下の里々を見にお廻りなされたのでございましょう」

「なにしにです」

「この旱では、今から凶年の策をも立てておかねばなるまいと、近ごろは、まま遠くの領下まで、ようお歩きなされまする。