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びしょうじょいちばんのり
美少女一番乗り
山本 周五郎
線上閱讀山本 周五郎《美少女一番乗り(びしょうじょいちばんのり)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 73,583 字 · 149 頁
母のおむらは若様の生まれた時お乳母に上がっていた。同じ年のほとんど同じ月に生まれた金之助は、若様と乳兄弟に当たるというので、同じ郎党の中でも別の扱いを受けて来たのである。それを今になってどうして「乳母に上がらなかったら……」などと後悔するようなことをいいだしたのか、金之助にはまるでわからなかった。
母を寝せて、自分の寝所へ入ってからも、金之助はながいこと燈火の下で書物を読んでいた。これからの武士は強いばかりではいけない、学問も十分にしなければならぬと思うので、毎夜の読書はかかしたことがないのだ。――そうして床へ入ったのは、もうやがて今の時刻で午前一時を過ぎたころであった。
つかれているので、まだほんのしばらく眠ったとしか思わない時分、裏の雨戸を忍びやかにとんとんと叩く音がして、
「金之助さん、金之助さん」
と呼ぶ声が聞こえた。――金之助ははっと眼を覚まし、なかば夢中で返事をしながら、それでも手早く身支度をして裏口へ出て行った。
「お奈々ちゃんか、馬鹿に早いな」
「嘘よ、いつもと同じだわ」
「そうかなあ、おれはまだ横になったばかりのような気がするけど、――すぐ行こうね」