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びしょうじょいちばんのり

美少女一番乗り

山本 周五郎

線上閱讀山本 周五郎《美少女一番乗り(びしょうじょいちばんのり)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 73,583 字 · 149 頁

青空文庫

五

「――待っておれ」

門を明けておいて、番士は奥へ走った。

五

与右衛門は寝間着のまま太刀を提げて出て来た。

「金之助か一大事とは何だ」

「申し上げます、豊川岸へ吉良勢が押寄せております」

「――なにッ」

「今ごろは山名郷を攻めておりましょう。北条の軍勢も国境に迫っていると存じます」

与右衛門はあっといった。

「それはまことであろうな」

「私がこの眼で見とどけたのです。一刻も早く出陣の御用意を遊ばせ。私は木戸木戸へ知らせに廻りまする」

「頼む、儂は直ちに城へ登るぞ」

行きかけたが振返って、

「金之助、――手柄だぞ」

とたのもしげに叫んだ。

警鐘が打鳴らされ、伝令が八方へ飛んだ。走り集まって来る兵や、東西と北の関を固めに繰出す兵で、嵩山城下は忽ち怒濤のように沸き返った。――しかしどうしても不意を衝かれた事は取返しがたく、二刻(四時間)とたたぬ間に東の出城三所、北の出城二所、西は山名郷、小草郷にかけて続々敵に攻略され、その夜に及んでは周囲十二里(四十八キロ)の柵壕で危うく食い止めたまま、嵩山城は完全に包囲されてしまった。

時に永禄八年二月十四日のことである。

東の国境には北条氏直の兵一万二千、西は豊川の岸を侵して吉良左衛門尉の一万余騎、北の関には牧野道意の軍八千、――これらの人数が城下の柵に迫って、蟻の這い出る隙もなくひしひし