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びしょうじょいちばんのり

美少女一番乗り

山本 周五郎

線上閱讀山本 周五郎《美少女一番乗り(びしょうじょいちばんのり)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 73,583 字 · 149 頁

青空文庫

「――――」

「心底見えるまで差添は預かっておく、帰れ」

だっと市之丞を庭へ突落としておいて、左内は足早に居間の方へ立去った。――小庭の方から顫えながら見ていた小房、父の姿が見えなくなると転げるように走り寄って、

「市之丞さま――」

と叫びながら、倒れている市之丞の体を抱起こした。

「おお小房どの」

「市之丞さま、お赦し下さいませ、どうぞ……」

と泣きながら縋りつくのを、静かに押しやった市之丞、手早く立上がって衣服の塵をはたくと、なおも小房が狂おしく、

「我慢のならないところでしょうけれど、小房を可哀相と思し召して、どうぞ、どうぞお赦し遊ばして――」

と寄り縋るのを、外向いたまま、

「あなたにはお気の毒ながら、何もかもこれまでの事でござる。さらば」

「いいえ、いいえ、小房は厭です。世間から嘲り罵られても、市さま御兄妹があればこそ耐忍んで来た小房、今もしお二人に見放されましたら、小房は生きていられませぬ」

「小房どの!」

市之丞は振返って、思わずぐっと小房の手を握ったが、すぐに身を離して、

「いや! 今は何も申すまい、口で申せば愚痴になる、――小房どの、どうかお体を堅固に、くれぐれも逸まった事をなさらぬよう、さらば」