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そうもくちゅうぎょ

艸木虫魚

薄田 泣菫

線上閱讀薄田 泣菫《艸木虫魚(そうもくちゅうぎょ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 114,254 字 · 226 頁

青空文庫

柿

何も知らない顔をしていて、実は蜜柑の皮を食うすべまで知っていたのだ。――禅というものは、いろんな場合に役に立つものである。

柿

今日野道をぶらついていると、一軒の田舎家の裏口に出た。そこには柿の木が立っていて、枝には柿の実の幾つかが、午後三時頃の日光を受けて紅玉のように光っていた。柿の木の上には、雨あがりの青磁色をした深い秋の空が、たとえようもない清明な姿をして拡がっていた。

燃えるような柿の色に暗示されて、赤絵を焼いたという柿右衛門の陶器には、器の一方に片寄せて花鳥をえがき、それに対する他の一方は素地の清徹をそのまま残して、花鳥の花やかな配色と対照させているのがよくある。ちょうどそのように柿の実の紅玉を見て楽むにも、それをもぎ取って手のひらに載せたり、果物籠に盛ったりしたのでは感興が薄い。やはり大空を陶器皿の見込に見たてて、深い空の色を背景として見あげるに越したことはない。柿右衛門の製作には、そのまま残された素地に、ちぎれ雲とか小さな鳥とかを描き込んで、その器の向きを示しているのがよくあるが、頭の上の柿の実に見とれる折にも、慾をいえば、雲の一片か小鳥かが空を飛んでいてくれたら、どんなにかおもしろかろうとも思うが、世のなかのことは、そうそう注文通りにはゆきかねるから仕方がない。