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ずいひつ しほんたいへいき
随筆 私本太平記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《随筆 私本太平記(ずいひつ しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 56,947 字 · 114 頁
その十五
そのフィクションもすべて史証を布石とする推理なのはもちろんだが。
さてこんなときの史料なるものが、いかにたよりにならないかも痛感する。三名の妃が、後醍醐にかしずいて行ったことは史上定説であるが、脱島の日には、どう連れて逃げたのか、一切それの明記はない。(伝説はあるが)――また帝の脱出径路も異説ふんぷんでみな古記と口碑の綯い交ぜ論にすぎないのである。じたい「増鏡」の筆者でも「太平記」の筆者でも隠岐は見ていず、地誌や地図にも晦かった人の筆なのだ。それを余りに金科玉条としすぎるからいけないのだ。たとえば、今日のマスコミの中にいてすら、近ごろやかましい李ラインの竹島が、隠岐の位置とは、わずか八十五浬の西北にあるという常識地理でも、都会人にはちょっと思い泛かばないのではあるまいか。(三四・九・四)
その十五
次の「千早帖」では、正成の金剛山、大塔ノ宮の吉野落ち、また九州における菊池武時の挙兵など、八荒の動乱から、足利高氏と新田義貞の中央進出までをほぼ収めたい。
だが、さしあたっては、隠岐脱出の帝をたすけて、名和長年が船上山に拠る経緯をつづってゆく。
幸田露伴氏にも“戯曲名和長年”の一作がある。