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ゆきぐにのはる
雪国の春
柳田 国男
線上閱讀柳田 国男《雪国の春(ゆきぐにのはる)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 136,000 字 · 266 頁
いわんやその内容がいかに変化してきたかの問題のごときは、実は考えてみようとした人もないのであった。
『平家物語』などとの一番大きな相違は、『義経記』には異本というものがいたって少ない。『平家』の方はいくつともない別系統の写本が見つかったことは、山田教授もすでに報告せられた通りで、『源平盛衰記』などもあまりに改悪が多いけれども、実は新しい極端な異本である。『平家』を『盛衰記』の程度にまで変化させて行くことももとはできたのである。しかるに『義経記』ばかりは一向にその跡が認められぬが、単にこの事実のみをもってあるいは写本流伝の時代のはなはだ短かったことを、想像する者があるなら速断である。何となれば人が口から耳と語り次いで、写本なんかは入用でなかった場合が、存外に永く続いたかもしれぬからである。
実際また『平家』なども同じことだが、物語の流布に携わった者は、もとは主として座頭であった。座頭には目がないから本などの入用は絶対になかった。しかるに『平家物語』にはあれだけの異本がある。不思議だと言ってよいのだが、流派の分立があまりにはなはだしく、かつ学問階級がそれぞれこれを後援したために、盲もぜひ自分の本を持たねばならなかったのである。