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ゆきぐにのはる
雪国の春
柳田 国男
線上閱讀柳田 国男《雪国の春(ゆきぐにのはる)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 136,000 字 · 266 頁
『鬼三太残齢記』
人が『義経記』を読むのを聞くと、そんな事はない、それは間違いだといって、ぽつぽつと話したのがこの本だとあって、いかにも小野太左衛門自身の筆記であるかのように見える。併し実際は決してそうでなかった。
近ごろ『仙台叢書』の一部として覆刻した『東藩野乗』という旧記には、漢文の清悦翁伝がある。これによれば『清悦物語』の始めて本の形になったのは寛文八年、すなわち小野氏が平泉の山でこの人に逢ってから、五十一年の後である。もうその時分には双方ともこの世にいなかったことは確かである。小野はもとより人魚は食わず、清悦自身もまた寛永七年に一度はとにかく死んだことが、現にその物語の中に書いてあるからである。しからば聞いてからこの本を書くまでの間に、また何度ともなき語り伝えがあったことは明白で、あるいは座頭のごとき専門家もこれに参与していたのかもしれぬ。またそう思っても差支ない箇条がいくらでも見出されるのである。
『鬼三太残齢記』
清悦の物語というものは異本が多いのみならず、その異同が信州の甲賀三郎のように、字句の端々だけに止まってはいない。時として重大なる内容、または標題さえも変わっていることがある。