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ゆきぐにのはる

雪国の春

柳田 国男

線上閱讀柳田 国男《雪国の春(ゆきぐにのはる)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 136,000 字 · 266 頁

青空文庫

本山真山の争い

孤立小数の外来部曲が、山水の形勝に拠って新宗教を宣伝することは、最も普通なる彼らの自衛策であったから、これもまた当初は男鹿人の地方神の、強く付近の農村を威圧したものであるかと思う。

それがひんぴんたる動乱の結果を受けて、ほとんどその由来を説明すべき何らの史料をも保存せず、近代わずかに一期の隆盛をへた後に、再びまた今日の衰微を見たのである。男鹿の美しく明るい風景の底には、こういう人生の常とも言い難いほどの、烈しい有為転変が潜んでいるのである。

本山真山の争い

これほど秀麗なる山水の間にあって、人がなお争ったということは不思議なようであるが、男鹿の南北の生活利害は実はむしろ余りに有力なる中心あるがために、昔も今のごとく早くから調和の困難を見たのである。似たる先例をあげるならば大和の大峰を中にした熊野と吉野、これなどは神武御東征の大昔から、すでに後代の本当二派の山伏の対立が、予期せられていたといってもよいくらいである。

近世に入っては富士も白山も、おのおのこれに近い抗争があった。おおよそ霊山の信仰にして、いわゆる先達の職分の重んぜられる場合には、二つ以上の登り口の互いに競争の相手方を否認せんとするは自然であって、その根元の動機は決して利欲のみではなかった。