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あさひのよろい

あさひの鎧

国枝 史郎

線上閱讀国枝 史郎《あさひの鎧(あさひのよろい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 239,520 字 · 475 頁

青空文庫

と、また飛沫に虹が立ち、

「キャ――ッ」

と、今度は幽霊女が叫び、あおのけざまに引っくり返った。

で、少し痩せた胸から腹から、股から膝から爪先まで、ポカーンと水面へノビて浮かび、一間ばかり流れたかと思うと、こいつも水中へ引っ込まれてしまった。死んだかな? 心配はない! 二間ばかりの上流へ、頭から先に浮かび上がり、

「怨みあるものか、ないものか……」

ピシャッ! とまたも水を刎ね、

「思い知らさでおくべきか――ッ」

「キャ――」

ドボ――ン!

と、鶏娘が沈み浮かび上がると、

「コケッコッコ――」

――で、大変陽気なのであった。

しかし浮藻だけは少し寂しく、水のかけっこの合戦から遁がれ、水中に立っている岩の上へ、一人で今登って行った。

年を加えた浮藻の体は、もうすっかり女になりきっていた。

円い肩、ふくよかの胸、ほどよく刳れた細い腰、ピチリと合わさって隙のない股、乳房の円味は半月形であり、脛の線など弓のようであった。水を浴びて少しばかり赤味ざした肌は、瑪瑙を薄絹で包んだようであり、踵まで届きそうな長い髪が、肩から背中を蔽うている様は、天使が黒い巨大な翼を背に畳んでいるそれのようであった。