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あさひのよろい

あさひの鎧

国枝 史郎

線上閱讀国枝 史郎《あさひの鎧(あさひのよろい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 239,520 字 · 475 頁

青空文庫

彼女の懐中にいた蝮であった。

膝の上へ嬰児が抱え上げられ、懐中が外側から圧せられたので、苦しくなって出て来たものらしい。

怒った鋭い輝く眼で、嬰児の顔を睨みながら、どこを噛もうかというように、鎌首をユラユラと左右へ振った。

嬰児は恐怖を知らなかった。

珍らしそうに蝮を見詰め、その鎌首を掴もうとして、両手を延ばして揺れる後を追った。

早瀬は垂れ布の内側で、眼をとじ物思いにふけっていた。

そういう人々をこなたに置き、間に馬酔木の叢を置き、その馬酔木の向こう側を、血のついた竹の杖をつき、襤褸を着た痩せた乞食のような盲人が、肩を落とし首を垂れ、憔悴しきった足どりで、おぼつかなさそうに夏草を分け、谷川の方へ歩いていた。

土岐蔵人頼春であった。

対岸には墨のような異様な煙りを、しきりに吐いている洞窟があった。

そうして谷川の岩の上では、裸体の浮藻が髪をしぼりながら、情熱の歌をうたっていた。そうして水中では幽霊女と、鶏娘とが水浴をつづけていた。

洞窟の中

谷川の対岸の洞窟の中は、暗さと煙りと悪臭とで、人など住めそうにも思われなかった。

でも人が住んでいた。

十数人の男や女が、のたうったり搦み合ったり、転げ廻ったりして住んでいた。