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あさひのよろい

あさひの鎧

国枝 史郎

線上閱讀国枝 史郎《あさひの鎧(あさひのよろい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 239,520 字 · 475 頁

青空文庫

蓬生は山伏たちのいる部屋へ行って、

「去年の暮れ頃からでござりますが、舅様には程を越えたほどの、綺麗好きとなりまして、座敷座敷を直すやら、新しく館を建てますやらし、ご神木としてお山にありました藤を、庭へ移し植えるやらいたしましたが、この頃になってお心狂われ、何の彼のと、埓もないこと云われ、藤はお山へ返せなどとも云い、館を飛び出しては騒ぎ廻り、ほとほと困じはてておりまする。薬も療治も甲斐ないありさま、なにとぞご祈念くださいまして、少しなりとも正気になりますよう……」

と、誠心こめてそう云った。

先達姿の大塔宮は、自ら備わる威厳のあるお顔へ、幽かに微笑をうかべられ、

「それは気の毒祈って進ぜる。平賀坊用意あれ」

と、言葉少なに仰せられ、やおら茵からお立ちになり、蓬生の案内に従って、後に八人の従者を連れ、戸野兵衛の寝室へ入られた。

と、兵衛は眼をあげて見たが、これも威厳にうたれたものか、荒れもせず喚きもせず、そのまま眼を閉じ静まってしまった。

平賀坊の平賀三郎は、宮家の御笈を兵衛の枕もとへ立て、独鈷、三鈷鈴、錫杖、五十串、備うべき仏具を取り出して、笈の上へ置きならべた。